日本は後進国?

ソフトバンク孫正義社長が「日本はAI後進国」と発言して話題になったが、もはやあらゆる分野で日本は後進国であるという言説が登場してきた。

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いつか来た道

"元々貧しく、一時的に経済大国になりつつあったが、最近また貧しくなりつつある"
"元々弱く、一時的に軍事大国になりつつあったが、最近また弱くなりつつある"

多くの日本人は日露戦争勝利によって日本は軍事大国になったと思った。その後の第1次世界大戦で欧米各国に大きく差を付けられてしまったことに気づいていた日本人はごく僅かで、そのまま軍事大国の自信を持ったまま大胆にも太平洋戦争に突き進んで敗戦を招いてしまったという痛い経験を我々日本人は持っているが、戦後の日本経済に対する現代日本人の錯覚も同じような反応を見せている。

すなわち、多くの日本人はバブル期で日本は経済大国になったと思った。その後の失われた20年で欧米各国に大きく差を付けられてしまったことに気づいた日本人はごく僅かで、そのまま経済大国の自信を持ったまま衰退産業にしがみつき続けるだけで新たな産業分野への投資を怠ったため失われた30年を招いてしまった。

敗れて目覚める?

"進歩のない者は決して勝たない 負けて目覚める事が最上の道だ 日本は進歩という事を軽んじ過ぎた 私的な潔癖や徳義に拘って、本当の進歩を忘れてきた 敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか 今目覚めずしていつ救われるか 俺達はその先導になるのだ。 日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃあないか" 臼淵大尉(戦艦大和特攻を前にして)

最大の問題:日本は成長スピードの緩急が欧米各国のそれと全然同期していない、ということ

  • 日本は全力疾走と牛歩を繰り返している
  • 一方欧米は長距離マラソン
戦国期〜江戸幕府による鎖国まで
欧州の大航海時代と同期(日本の成長スピード = ヨーロッパの成長スピード)
鎖国から開国まで(江戸期): 牛歩
欧米の産業革命後の資本主義経済システムと完全に非同期→一気に差を付けられる(日本の成長スピード << 欧米の成長スピード)
明治維新日露戦争終結まで(明治時代): 全力疾走
欧米に追いつけ追い越せで、欧米の成長スピードを凌駕(非同期)(日本の成長スピード >> 欧米の成長スピード)
日露戦争終結~1945年敗戦まで(大正・昭和初期): 牛歩
欧米よりも優れていると自負し進歩を軽んじるように(非同期)(日本の成長スピード< 欧米の成長スピード)
戦後〜バブル直前: 全力疾走
再び欧米に追いつけ追い越せで、欧米の成長スピードを凌駕(非同期)(日本の成長スピード > 欧米の成長スピード)
バブル崩壊〜現在: 牛歩
欧米よりも優れていると自負し進歩を軽んじるように(非同期)(日本の成長スピード < 欧米の成長スピード)

日本も欧米と同じスピードで走り続ければ良い(その代わり途中で止まるな)

全力疾走と牛歩を繰り返すのを改め、常に日本の成長スピード = 欧米の成長スピードにして進めば何も問題はない。頑張りすぎ厳禁。過信・怠けすぎも厳禁。

唯一スピードが同期していた時代:安土桃山時代に学べ

欧米と接触し始めたばかりだったので、欧米と比べて日本人は優れているとか劣っているとかという議論そのものが存在しなかった時代。良いものは良い、という精神で海外の文物を積極的に取り入れ、日本独自のアレンジを加えて文明を開花させた。南蛮文化・安土桃山文化の独自性と完成度を見よ。

日本人自身もどんどん海外に打って出ていた。朱印船貿易で海外と交易し、東南アジア各地に日本人町を建設した。イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルに日本に行くように進めたのはフィリピンにいた薩摩人。南蛮人もキリシタもウェルカム。倭寇の精神で儲かるなら交易する相手は選ばない。当時の日本は世界に開かれていた。(その後の江戸幕府鎖国政策はこのような日本人の原始的なエネルギーを完全にスポイルし、200年も世界から隔絶されてしまったせいで、いつの間にか黒船や異人に怯えるいじけた江戸町人のメンタリティが日本人の意識構造の基幹になってしまった。)

マスケット銃(火縄銃)の大量生産で、知らないうちに軍事大国

朝鮮出兵で日本軍の銃火器の運用技術レベルは世界水準から見ても頭一つ抜けていたことが判明。慶長5年1600年頃までの世界の鉄砲の総数は約90万丁、そのうち日本が約60万丁を保有していた。ちなみに朝鮮出兵の真の目的は、スペインが明を支配下に置く前に、明を日本の支配下に置くことだったらしい。秀吉は対スペイン戦を意識しており、当時の日本は世界帝国スペインと互角に渡り合えるポテンシャルを秘めていた。当時の日本経済の規模等詳細は不明だが、経済的に余裕の無い国が金がかかる外征(朝鮮出兵)なんかをするはずがなく、その点から考えると経済大国だった可能性が高い。

江戸幕府という途方もない後進地理念を固守する統一政権が腰を据えたことが日本の不幸な運命だった。日本の近代国家としてのあらゆる可能性の芽は、この政府によって強力な封権制度が再編された結果、完全におしつぶされてしまう。戦国のエネルギーが残っていたのは元禄期までにすぎない。まったく新しい開放経済という条件に直面している現代日本ナショナリズムの歴史的原点は、やはり、あらゆる可能性が開かれていたこの戦国時代に求められるべきではないだろうか。わたしたちのナショナリズムが奇妙なゆがみを受けないためにでもある。" 会田雄次著『日本人の意識構造』から

日本人の意識構造 (講談社現代新書)

日本人の意識構造 (講談社現代新書)

でもやっぱり最後に一言

日本だってこれまで大国になろうとして色々チャレンジしてきたけど、うまく行きそうになると必ず欧米の干渉で潰されてきた。

これだけやられてりゃ先進国になれる方がおかしい。今まで日本から先進国の芽が出そうになるとぜ〜んぶ国際政治ナンタラに潰されてきたのサ。孫正義はそこんとこ分かってない。